西日本豪雨でキャンパスが被災した大学があります。広島国際大学で救急救命士を目指す学生が、土石流が発生した山を登り、土砂災害の被害や復旧について学びました。山際に住宅が建ち並び、土砂災害警戒区域が4万7000か所以上で全国最多の広島県。「土砂災害のリスク」と「新たな防災気象情報」の運用について解説します。

広島国際大学 救急救命学科 佐々木広一教授
「災害後の復旧・復興を自分で体感するために、覚えるのではなく感じられるようになってほしい。しっかり見学してほしい」

広島国際大学”救急救命学科”の学生たちです。課外学習のテーマは「土砂災害」です。

2018年の西日本豪雨―。広島国際大学の向かいの山で土石流が発生し、大量の土砂を含んだ濁流が流れ込みました。

当時、東広島市では7月5日からの4日間で、平年の7月・1か月間の雨量を大幅に超える雨が降り、県内で最も多い「2646か所」の山が崩れました。

学生たちは、土石流が発生した山を登っていきました。山肌には今も大きな岩が残っています。

広島国際大学 竹本良正さん
「これくらい大きいと、落ちてくる速度も半端ではないと思う。被害が想像もできない」

広島国際大学 大田虹郎さん
「自分がもし大学にいるときに、土砂崩れが起きて入ってきたら怖い」

被災した山を元の森林に・・・西日本豪雨からまもなく8年

被害が大きかった東広島市の山では、治山事業が進められています。

斜面の不安定な土砂を固定し、水路などの工事もしています。被災した山を、元の森林に戻すための取り組みです。

広島森林管理署 山地災害復旧対策室 藤原誠室長
「登ってくるときに気づいたかもしれないが、シカのフンが結構ある。治山対策で問題がシカ。マットを張って緑化しても、すぐ食べてしまって裸地化するところもある。シカの被害地が雨で崩れることもある」

広島国際大学 小渕媛子さん
「この状態になるまでに、どれくらいかかった?」

広島森林管理署 山地災害復旧対策室 藤原誠室長
「おととし施工で2年くらい。シカがいなければ、もっと草が生い茂ってくる。そこに木の種が入って木も生えて、段々と周りの景色と変わらないようになっていく」

西日本豪雨からまもなく8年―。学生たちは当時小学生でした。

広島国際大学 大田虹郎さん
「何年も経って忘れていたが、改めて自然の怖さを感じた」

広島国際大学 竹本良正さん
「災害はいつ起こるか分からない。知っておくことによって、冷静に対処できる」

広島国際大学 小渕媛子さん
「人の気持ちに寄り添えるような救急救命士になりたい」

過酷な現場で、命と向き合う「救急救命士」。佐々木教授は、過去の災害から学んでほしいと話します。

広島国際大学 救急救命学科 佐々木広一教授
「ここまできれいになってしまうと、新しく入ってきた学生たちは、こういう山なんだろうと単純に済ませてしまう。忘れてはいけない、風化させてはいけない。次世代の救急救命士を育成する上で、私は必要だと思う」

”土砂災害警戒区域”4万7000か所以上 全国最多の広島県 「土石流」の被害とは

解説:RCCウェザーセンター 梅川千輝 気象予報士
   (2014年 広島土砂災害/2018年 西日本豪雨など取材)

土石流など、土砂災害の恐れが高い「土砂災害警戒区域」は、広島に4万7895か所あり、全国最多です。

広島は「まさ土」の弱い地盤で、山ぎわに住宅地が広がり、大雨で崩れやすい場所に多くの人が住んでいます。土石流の被害を改めて確認します。

これは1999年に、広島市佐伯区で起きた土石流発生の瞬間です。住宅をなぎ倒しながら、一気に流れ込んでくる様子を捉えています。

こちらは静岡県熱海市で起きた土石流です。建物などを破壊し飲み込みながら、斜面を流れ下っていく様子が確認できます。

土石流が山の上流で発生してから、ふもとの住宅地まで到達する時間はあっという間です。

京都大学の研究では、「広島土砂災害」で最も被害が大きかった広島市安佐南区八木3丁目で”96秒”。

「西日本豪雨」で12人が犠牲になった、熊野町の大原ハイツに至っては”50秒”というシュミレーション結果が出ています。

土石流が発生してから、逃げ切ることはできません。

犠牲者の9割以上が、”土砂災害警戒区域等”の範囲内or近傍で被災

静岡大学の研究では、土砂災害犠牲者の9割以上が、「土砂災害警戒区域等」の範囲内または近傍で被災しているというデータが出ています。

土砂災害が起こる恐れが高いと事前に指定されている場所で、多くの人が被災し、亡くなっているということを示しています。

大雨で土砂災害の危険度が高まる前に、「土砂災害警戒区域等」の区域外に出て、安全な場所に避難しておくことが重要です。

そういった意味では、28日から提供が始まった「新たな防災気象情報」が、適切な避難行動を取る上で重要な判断材料になります。

RCCウェザーセンター 気象予報士解説 「新たな防災気象情報」

新たな防災気象情報災害のカテゴリーは、4つに分けられます。

◆河川氾濫・・・一級河川などの大河川の氾濫
◆大雨・・・低地の浸水/大河川以外の氾濫
◆土砂災害・・・急傾斜地のがけ崩れ/土石流
◆高潮・・・海水面上昇/波の打ち上げによる浸水

【新運用のポイント】
①情報名称にレベルの数字をつけて発表・統一感を持った名称に
レベル2=「〇〇注意報」/レベル3=「〇〇警報」など統一感を持った名称になります。レベル表記を頭につけたのが正式名称で、例えば大雨だと「レベル5大雨特別警報」が1つの情報名になります。

②レベル4相当の情報に「危険警報」を新設
「避難指示」にあたる、警戒レベル4に相当する情報として、「〇〇危険警報」が新設されます。

これにより、「レベル」と「情報名」でどの避難行動を取ればいいのか、分かりやすくなります。

ただ、変わるのは名前だけではありません。「土砂災害」に関する情報が、どのような運用になるのか具体的に確認します。

新たな防災気象情報「土砂災害編」

【ポイント①:発表基準の見直し】
これまでは「レベル3相当」と「レベル4相当」でそれぞれ基準が設けられていました。

しかし、これからは「レベル4相当」の基準に到達すると予想される場合にのみ、「レベル3相当」が発表されます。

つまり、「レベル3土砂災害警報」が発表されたら、まもなく「レベル4土砂災害危険警報」に切り替わるという運用になります。

<レベル3土砂災害警報 発表基準>
「レベル4土砂災害危険警報」の基準値に到達が予想される「3~6時間前」に発表

<レベル4土砂災害危険警報 発表基準>
「レベル4土砂災害危険警報」の基準値に到達が予想される「2時間前」に発表

発表基準を見直すことで、「レベル3相当」の発表回数が大幅に減ることになります。

これまでは、「レベル3相当」止まりの回数が数多くありましたが、今回からは、「レベル4相当」への”予告的”な意味を込めた発表になります。

今後は「レベル3土砂災害警報」の重要度が、より高まります。

雨量や土の中に含まれる水分量にもよりますが、早ければ”1時間程度”で「レベル4土砂災害危険警報」に切り替わる想定です。

「警戒レベル4」と「警戒レベル5」では世界が違います。

「警戒レベル5」はすでに災害が発生しているか、切迫している状況です。こうなると避難が、かえって危険に可能性があります。

「警戒レベル4」までに「危険な場所から全員避難」とされているのはこのためです。

「土砂災害警戒区域」などに指定され、大雨によって気象庁の「キキクル」で危険度が高まっているエリアは、特に厳重な警戒が必要です。

土砂災害に関しては「レベル3」が発表されたら、今後「レベル4」に切り替わると思って、準備・行動することが重要です。

大雨シーズンが迫っています。防災気象情報を有効に活用して、自分や家族の命を守る行動につなげていく必要があります。