激甚化する気象災害。2014年の広島土砂災害、2018年の西日本豪雨では、県内で多くの命が奪われました。

記録的な大雨による「河川の氾濫」や「街の浸水」は、全国でくり返し起きています。

大雨などによる、災害発生の恐れが高まった際に、気象台などから発表される”防災気象情報”。この運用が、28日から大きく変わります。

「防災気象情報」とは? ”複雑で分かりにくい”現在の課題は

気象庁などが発表する「防災気象情報」は、大雨や土砂災害、洪水など災害の危険を知らせる情報です。

一方で、「警戒レベル」は市や町などが発表する避難情報です。「災害発生の危険度」と「取るべき避難行動」を住民が直観的に理解できるように、まとめられています。

この2つの情報は密接に関わっています。「防災気象情報」が「警戒レベル」に相当する情報として、紐付けられています。

【現在の課題】
①「特別警報」でもレベルがまたがっている
(例)「大雨特別警報」=レベル5相当/「高潮特別警報」=レベル4相当

②情報名に統一感がない
(例)レベル4・・・「氾濫危険情報」/「土砂災害警戒情報」/「高潮特別警報・高潮警報」など

③表に空欄がある
(例)「洪水害」・「浸水害」にはレベル4相当の情報がない

現在の運用では、「どの情報がどのレベルに紐付いているのか分かりづらい」という課題があります。

複雑なこの情報体系を、分かりやすく整理するのというのが今回のポイントです。

新たな防災気象情報 ポイントは? 5月28日から提供開始

新たな防災気象情報災害のカテゴリーは、4つに分けられます。

◆河川氾濫・・・一級河川などの大河川の氾濫
◆大雨・・・低地の浸水/大河川以外の氾濫
◆土砂災害・・・急傾斜地のがけ崩れ/土石流
◆高潮・・・海水面上昇/波の打ち上げによる浸水

【新運用のポイント】
①情報名称にレベルの数字をつけて発表・統一感を持った名称に
レベル2=「〇〇注意報」/レベル3=「〇〇警報」など統一感を持った名称になります。レベル表記を頭につけたのが正式名称で、例えば大雨だと「レベル5大雨特別警報」が1つの情報名になります。

②レベル4相当の情報に「危険警報」を新設
「避難指示」にあたる、警戒レベル4に相当する情報として、「〇〇危険警報」が新設されます。

これにより、「レベル」と「情報名」でどの避難行動を取ればいいのか、分かりやすくなります。

ただ、変わるのは名前だけではありません。今回は「河川氾濫」と「大雨」に関する情報が、どのような運用になるのか具体的に確認します。

新たな防災気象情報「河川氾濫編」

流域面積が大きく、氾濫した場合に重大な被害になる一級河川などの「大きな川」には、「河川氾濫」の情報が適用されます。

【広島で「河川氾濫」の情報が発表される川】(洪水予報河川)
◆江の川(上流)/神野瀬川/西城川/馬洗川
◆太田川/根谷川/三篠川
◆小瀬川
◆黒瀬川
◆沼田川
◆芦田川/高屋川
※「河川ごと」に発表

「西日本豪雨」を上回る記録的な雨量となった、2021年8月の大雨では、「江の川」が氾濫するなど、県内で大河川の氾濫はくり返し起きています。

太田川河川事務所 流域治水課・河合珠実さん
「河川の幅が広いということは、流れる水の量も多いということ。住民生活・経済活動にも影響を与えて、より深刻な被害になる」

大河川には「上流」から、水位観測所が複数設置されています。

流域面積が大きく距離も長い分、「大河川」は中小河川に比べて、水位の変化が緩やかなのがポイントです。

「上流」の現在の水位データなどをもとに、「下流」の今後の水位を予測します。

太田川河川事務所 流域治水課・河合珠実さん
「現在の水位をもとに予測しているので、比較的精度は高い。雨が降り終わった後でも、タイムラグで下流で水位上昇する恐れがある。安易に川に近づかないでほしい。避難を終えるタイミングにも気をつけてほしい」

新たな防災気象情報「大雨編」

同じ「氾濫」でも、中小河川には「大雨」の情報が適用され、市町ごとに発表されます。

川幅が狭く、距離も短い「中小河川」は、短時間の大雨で急激に水位が上昇します。

そのため「中小河川」は増水や氾濫を予測するために、「雨の情報」の重要度が、より高くなります。

実際に水位が高まり始めてからでは、避難が間に合わない恐れがあるためです。

広島地方気象台 瀧澤裕興 水害対策気象官
「水位よりも、これまで降った雨の影響、これからどれぐらいの雨が降って、どれぐらいの水量に増えていくかが大きい部分を占める」

県内でも「中小河川」は、数多く流れています。

中小河川が氾濫するような大雨の場合には、「低い土地の浸水」も発生しているケースがほとんどで、「大雨」の情報に含まれています。

「大雨」の情報が発表された時点で、「中小河川の氾濫」と「低い土地の浸水」どちらの危険度が高まっているのかは、気象庁の「キキクル」で確認できます。

もし自分がいるエリアに「レベル4大雨危険警報」が発表されたら…。

広島地方気象台 瀧澤裕興 水害対策気象官
「この辺りは大雨キキクルで紫色がついているが、浸水キキクルは色がついていない。しかし、洪水キキクルの同じ場所が紫になっている。この場合は、浸水ではなく、中小河川の氾濫の危険度が高まっていることを意味している」

RCCウェザーセンター 気象予報士解説「河川氾濫」

解説:RCCウェザーセンター 梅川千輝 気象予報士
2014年 広島土砂災害/2015年 関東・東北豪雨(鬼怒川決壊)/2018年 西日本豪雨 など取材

【氾濫のメカニズムは?】
大雨によって水かさが増して、堤防を越える。もしくは、堤防が決壊して川の水が溢れ出します。

大河川の場合は、広範囲・長時間大雨が続くと、ジワジワ水位が上がってきます。

28日から”大河川”の氾濫は、「河川氾濫」の情報で発表されます。

【広島で「河川氾濫」の情報が発表される川】(洪水予報河川)
◆江の川(上流)/神野瀬川/西城川/馬洗川
◆太田川/根谷川/三篠川
◆小瀬川
◆黒瀬川
◆沼田川
◆芦田川/高屋川
※「河川ごと」に発表

広島で「河川氾濫」の情報が発表されるのは、「江の川」や「太田川」など、県内を代表する大きな川です。自分が住んでいる場所の近くに、これらの大河川がないか改めて確認が必要です。

流域面積が大きく、水量も多いこれらの川が氾濫すると、甚大な被害が出ることになります。

RCCウェザーセンター 気象予報士解説「大雨」

【中小河川の氾濫は「大雨」の情報】
同じ氾濫でも、”中小河川”の場合は「大雨」の情報として、市町ごとに発表されます。

同じ川でも「大河川」と「中小河川」で、情報が2つに分かれることになります。

【”中小河川”は局所的・短時間の大雨で急激に水位上昇】
中小河川は局所的・短時間の大雨で急激に増水します。

これは神戸市を流れる、都賀川の写真です。雨が強まり始めて、わずか「18分」で、橋のすぐ下まで水位が上昇しています。この日、川遊びをしていた小学生などが流され、5人が亡くなっています。

これは同じ都賀川で、別の日の写真です。今度は「2分」で水位が上昇し、流れも激しくなっています。

中小河川では「水位が上がってきたから避難しよう」では間に合いません。

水位が上がる要因となる雨が、いつ・どこで・どれくらい降るのか。降った雨が川にどれほど流れ込むのかなど、「雨の情報」がより重要になってきます。

【「大雨」の情報には”低地の浸水”も含まれる】
”中小河川”が氾濫するような大雨の場合、「低い土地の浸水」も起きているのがほとんどです。そのため「大雨」の情報に含まれています。

同じ川といっても、大河川・中小河川で災害リスクが異なります。今後、防災気象情報を受け取るときの大前提として、知っておく必要があります。

【ハザードマップで事前にリスク把握を】
大雨シーズンを前に、まずはハザードマップなどで、自分が暮らす地域の災害リスクを改めて確認してください。

その上で、雨が強まってきた際に、防災気象情報が発表されたら、その情報を正しく受け取り、自分や家族の命を守る避難行動に役立ててください。

新たな防災気象情報は、28日に提供が始まります。