豊臣秀吉の家臣・宇喜多秀家が築城した岡山城。黒塗りの下見板で覆われた外観から、別名「烏城」とも呼ばれています(烏=カラスのこと)。
1597年、安土桃山時代に完成した天守は1945年の空襲で焼失し、1966年に再建。そして築城450年を迎えた2022年11月、「令和の大改修」を経てリニューアルオープンしました!
威厳あふれる漆黒の外観はそのままに、館内の展示を一新。
展示の監修を手掛けたのは、岡山市出身の歴史学者・磯田道史氏。磯田氏がこだわったのは「楽しく」「分かりやすく」岡山城の歴史を伝えること。全館を通して、子どもから歴史好きまでを魅了するコンテンツが満載なのです!
出入口のある地下1階では、「そもそも岡山城ってどんなお城? どんなところが魅力なの?」という概要が紹介されています。
天守の姿が描かれた江戸時代の絵図や、元禄13年当時の岡山城の本丸を精巧に再現したジオラマが見どころ。
学芸員さんいわく「最上階の6階から見学するのがオススメ」だそうです。下の階に降りていくにつれて、時代が進んでいく展示構成になっているためです。
ここが6階。往時の天守最上階を蘇らせた空間となっています。
焼失する前の天守閣の古写真をAI技術でカラー化し、京都の金閣寺など禅宗の寺院に使われている「華頭窓」(内部のみ)や、金色の唐松文様を一つひとつ刷り上げた壁紙「唐紙」などを再現しています。
少し薄暗く感じるのは、照明を極力控えて、築城当時の明るさを体験できるように作られているから。天気や時間によって窓から入る光の量や色が変わるので、往時の雰囲気をかなりリアルに体感できます。
5階にあるのは、プロジェクションマッピングを用いた展示。岡山のまちの成り立ちを10分弱の映像で紹介しています。
面白いのは、宇喜多直家の妻・おふく、宇喜多秀家の妻・豪姫、池田光政の妻・勝姫がナレーションを務めているところ。まるで井戸端会議のような親しみやすい語り口で、3人の妻たちがそれぞれの夫の功績を来場者に教えてくれます。
映像と妻たちの語りを通して、防災や教育、医療などに関する歴代城主の取り組みが、現在の岡山のまちにも生きていることがよく分かります。武将を支えてきた女性たちの存在を感じさせてくれるところも素敵な展示ですね。
そして5階に来たら、窓から外を眺めるのをお忘れなく。屋根に鎮座する金のシャチホコの後ろには、旭川と日本三名園の一つである『後楽園』、それから岡山市街が広がっています!
4階は岡山を本拠地とした宇喜多直家と、岡山城をつくった直家の息子・秀家、そして天下統一を果たす豊臣秀吉の3人を軸に、宇喜多家2代が岡山を発展させた経緯を紹介しています。
「関ヶ原の戦い」で敗戦した宇喜多家。戦に負けた一族の資料は消滅してしまうことがほとんどですが、岡山城では、宇喜多家に仕えていた家臣の家系が代々守ってきた貴重な資料を見ることができます。
そしてもう一つ注目したいのが、宇喜多秀家時代の「金箔軒平瓦」。岡山城は築城時、随所に金箔瓦が使われており、「金烏城」とも呼ばれていました。展示の金箔瓦は本丸から離れた場所で出土したもので、天守以外の建物も豪華絢爛な作りだったであろうことを伺わせます。
博物館といえば、学術的に正しいこと・ものを紹介する場所。しかし磯田氏は、城や城主にまつわるウワサ、興味深い豆知識も教えてくれます。ユニークなエピソードを知ると、歴史上の出来事や人物が身近に感じられますね。
天下分け目の戦といわれる「関ヶ原の戦い」。実は、岡山とも深い関係があるのをご存じですか?
3階では、「関ヶ原の戦い」で大きく運命が動いた、岡山城の歴代城主たちの生涯を紹介しています。
豊臣政権下の五大老の一人であり、西軍の主力部隊を率いた岡山城の初代城主・宇喜多秀家。
「関ヶ原の戦い」のキーパーソンとなった小早川秀秋。彼の動きが「関ヶ原の戦い」の勝敗を決定づけました。秀秋は敗戦した宇喜多家に代わり、約2年間、岡山城の城主を務めました。
徳川家康率いる東軍として参戦し、約200年にわたって岡山藩を治めた池田家。
宇喜多、小早川、池田が「関ヶ原の戦い」において、それぞれ何を思い、どう動いたか。文章だけでなく、ドラマティックなオリジナルの映像作品で掘り下げています。
2階は、岡山藩初代藩主の池田光政とその息子で2代目藩主の剛政を中心に、池田家ゆかりの資料を展示。
美術館・博物館クラスの環境を整えた空間で、きらびやかな奉納刀や、繊細な蒔絵が施された漆箱など、貴重な宝物をじっくり鑑賞できます。
また土木のスペシャリストとして、池田家に仕えながら岡山のまちづくりに尽力した人物・津田永忠にまつわる資料も。永忠の子孫から譲り受けたもので、本邦初公開だそうです。
「城主の間」も再現されています。
1階まで下りてきました。ここからは、ワクワクするコンテンツが続きます。
まずこちらは、戦国武将たちが使っていた刀や銃のレプリカが並ぶコーナー。実際に手に取って、重さや使い方を知ることができます。華やかなプロジェクションマッピングにも注目。
学芸員さんのイチオシは、馬に乗りながら撃つ鉄砲「馬上筒」。コンパクトな形ですが、持ってみると結構重い! 現代人なら、一発撃つだけでめちゃくちゃ疲れそうです……。
レプリカに触れて「この重量の銃を使いこなすって、当時の武士はどんな体格をしていたんだろう?」「戦国武将たちが乗っていた馬って、どれくらいの大きさなんだろう?」と興味が湧いたところに、武将と背比べができるパネルや、当時の馬のサイズがわかる模型が!
「えっ、戦国武将ってこんなに小柄だったの!?」「馬もロバみたいな見た目で案外かわいいな!?」と驚くはず。ちなみに馬に乗って記念撮影もできます!
そのほか駕籠に乗って、お殿様&お姫様気分で写真を撮るもよし。
今後は宇喜多直家とおふく、秀家と豪姫の衣装の着付け体験も行われる予定です(2023年1月現在は感染症対策のため衣装展示のみ)。
そして1階にはカフェスペースもあり、併設された『烏城カフェ』のドリンクやスイーツなどが楽しめます。壁面には磯田氏による岡山城の解説動画が映し出されています。
オリジナルグッズや岡山土産が販売されているショップでは、登城記念の御城印が人気なのだとか。ぜひ購入して帰ってください。
地下1階に戻り、さらに階段を下りると、天守に付属する『塩蔵』を改装した展示室があります。
アメコミ風のポップな空間でフィーチャーされているのは、忍者! 岡山城は忍者ともゆかりが深いのだそう。宇喜多家、小早川家、池田家と忍者の関係をマンガで紹介しています。
こちらは忍者にまつわるクイズを解いたあと、城に侵入するゲームにチャレンジできるデジタル型展示。カメラ機能が備わっているので、忍者の格好に「顔ハメ」した状態でプレイできるのが楽しい!
さらに、展示室の一角でフラッシュをたいて撮影すると、ある仕掛けが発生します。どんな仕掛けかは、スマホやカメラで撮ってからのお楽しみ!
斬新な展示内容で訪れた人の心をつかむ岡山城。「集う城」を目指しており、10万円で天守全体(※2階を除く)を貸し切ることも可能です。結婚式や誕生パーティー、コスプレ撮影会など、さまざまなことに利用されているそうです。
見学するだけでなく、「城をレンタルする」というワンランク上の楽しみ方もアリかもしれません!
岡山城
住所/岡山県岡山市北区丸の内2-3-1
電話/086-225-2096(岡山城天守閣)
営業時間/9:00~17:30(最終入場17:00)
入場料/高校生以上400円 小中学生100円 未就学児無料
定休日/12月29日~31日
https://okayama-castle.jp
瀬戸内Finderフォトライター ヒロエ カナコ
▼記事提供元
「瀬戸内Finder(ファインダー)」は、瀬戸内を共有する7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)の魅力を世界に発信しています。
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