広島市の平和大通り沿いに植えられていたクスノキが、9日未明、平和公園に移植されました。その背景には、平和公園周辺の「目指すべき姿」に向けた取り組みがありました。

広島市中区にある平和大通り・田中町交差点近くに植えられていた、樹齢およそ70年のクスノキは、先日、自転車道を整備するために根元から掘り起こされました。

そのクスノキが9日未明、「原爆の子の像」の近くに移植されるため、全長20メートルを超えるトレーラーに乗せられ平和公園まで運ばれました。長さ約13m、重さ約10tのクスノキは、大型のクレーンを使って慎重に吊り上げられ、微調整を繰り返しながら徐々に垂直に立てられていきました。

なぜクスノキをわざわざ移植? その理由とは

広島市は今年度、このクスノキの移植やそれにともなう調査などに、約4570万円の予算を計上しています。なぜ、これほどの費用と手間をかけて、クスノキがここに移植されることになったのでしょうか。

広島市公園整備課の白松保幸課長は「丹下健三氏が『軸線』を意識して平和公園を設計された。その軸線の南側から原爆ドームを見たとき、背後にある建物を、長いスパンにはなるが樹木で遮蔽するため」と話します。

原爆資料館本館、原爆慰霊碑、原爆ドームは、南北軸の直線である「平和の軸線」上に配置されています。広島市は、資料館や慰霊碑から北側を望む際に、原爆ドーム以外の建物が見えない状態を「目指すべき姿」としています。

2022年には、原爆ドーム背後のエリアに、新しい建物を建てる際の高さ制限を設けました。一方で、既に建っているビルなどにはこの制限が適用されないことから、現在はドームの背後に、広島商工会議所ビル(今後解体予定)などが見える状態となっています。そこで、平和公園内の植栽で背景の建物を隠そうと、今回のクスノキの移植が決まったのです。

移植されたクスノキ 風景の変化は?

移植前と比べると、原爆の子の像の東側にクスノキが植えられたことで、背後に見えていた広島商工会議所ビルが少し見えづらくなったように感じますが、まだまだ植栽で建物を隠せているような状態ではありません。

広島市は今後、このクスノキに肥料を与え、育てていくことにしています。

広島市公園整備課 白松保幸課長
「木が育つのには10年、20年ぐらいのスパンが必要だと思っています。20年後はちょうど被爆100年ということにもなります」

広島市はこのほかにも、2029年度にかけて平和公園内でクスノキなどを新たに植える予定で、平和公園と原爆ドームの「目指すべき姿」に向けた取り組みを進める予定です。