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「真剣に陸上に向き合っているのに許せない」後を絶たない“アスリート盗撮” 子どもの安全を守る取り組みは

スポーツ選手を性的な意図を持って撮影する「アスリート盗撮」。盗撮の対象になりやすい陸上競技の大会では、被害を防止するための取り組みが強化されています。

4月29日、広島市で開催された織田幹雄記念陸上大会では、トップアスリートに加わって、小・中学生や高校生も日ごろの成果を発揮しました。

陸上競技に励む子どもたちの憧れの舞台には、盗撮を注意する文字が目立ちます。真剣に取り組む選手を、性的な目的で撮影する事例が後を絶ちません。

広島県立安芸府中高校の陸上部です。3年生の女子部員は、かつて、知らない人からの盗撮被害に遭いました。

陸上部員
「通りすがりの人にスマホを向けられて自分のアップしているところを盗撮されたので、競技前にされたので集中できなかった。あきらかにスマホをこちらに向けていたので、怖かったです」

仲間の被害を聞いた部員も、恐怖や怒りを覚えたといいます。

陸上部員たち
「SNSで出されたら、消せないから怖いなって思います」
「撮られていると思うと集中できないのでやめてほしい」

元100Mハードル日本代表の木村文子さんは、学生の陸上競技会は、狙われやすいと話します。

木村文子 さん
「トップ選手の試合に関しては、かなり入場規制が導入されているんですけども、学生の試合では、入場規制を厳しくするのができあがっていないのかなと」

一方で、生徒たちのユニフォームは、トップアスリートと同様に、風の抵抗を受けにくくしたり、関節の可動域を広げたりするために、肌が見えるような設計が多くなっています。

木村文子 さん
「露出を高めたいから着ているのではなくて、記録を0.01秒でも1cmでも縮めて伸ばしていきたいという思いで、トップの選手と同じような形状のユ二フォームを着て学生たちも記録をねらっているので」

木村さん自身も学生時代、着用する服に気を付けていたといいます。

木村文子 さん
「私も大学時代に盗撮をされているかもしれないと思いながら競技をする期間があったので、下着が透けにくくなる素材の服を着用したりとか、大学の陸上部としてうながしてくださった」

織田記念でも、アスリートが被害に遭わないよう、運営サイドは対策を強化しています。

広島陸上競技協会 新宅昭二 競技運営委員長
「競技役員が見回ることと、大型映像などで啓発をしていることと、撮影のエリアを分けて、下のエリアでは(望遠レンズなどで)撮れないエリアを設けている」

多くの陸上の大会では、短距離種目のスタート付近や、跳躍種目の着地点の正面などを撮影禁止エリアとしています。たとえ大会に出場する選手の保護者であっても、禁止エリアでは撮影することができません。

織田記念出場の中学生たち
「親としてはアップで撮りたいって言ってて、でもできないから残念って言っていました」
「真剣に陸上に向き合って大会とか記録会で走っているのに、絶対に許されないし、やめてほしいなと思います」

木村さんは、選手が十分に力を発揮するために、見る人の理解が必要だと訴えます。

木村文子 さん
「学生たちが日々練習を積み重ねてきて、この試合でハイパフォーマンスが出たら次の試合につながっていくっていう、一瞬にかける思いを持って競技をしていると思うので、まわりの方々のご理解も含めて観戦してもらいたいなと願っています」

なお、警察が動くことが難しい現状もあります。
広島県内では、2023年5月の高校生の陸上競技会で、客席から女子生徒の下半身を拡大して撮影したとして、男が県の迷惑防止条例違反で逮捕されています。

2023年7月には、性的な撮影などの被害拡大を防ぐための法律、「性的姿態撮影等処罰法」いわゆる「撮影罪」が施行されました。

施行以降2年間の県内での検挙数は232件に上りますが、「撮影罪」は、ユニホーム姿のアスリートを撮影すること自体は対象としていません。

そのため現状は、「撮影罪」よりも法定刑の軽い「県の迷惑防止条例」が適用される可能性が高くなっています。

また、不特定多数が出入りできるという状況も、事件化をより難しくしています。
広島陸上競技協会の新宅昭二競技運営委員長は「観客は大勢いる中で、保護者・関係者なのか、盗撮目的の人なのか、見分けるのは困難」と話しています。

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