広島カープの 矢野雅哉 選手は、1年前の秋季キャンプでは「ショートのレギュラーを取りたい」と語っていた。2024シーズン、その目標を達成して、ゴールデン・グラブ賞も受賞。ただ、そこにはまだ満たされない思いがあった。
し烈な首位争いを繰り広げていたカープでショートのレギュラーを奪い取った矢野。それでも彼に満足はなかった。ショートとしてシーズンを完走したものの、彼は “その先の栄光” を見すえていた。
広島カープ 矢野雅哉 選手(7月)
「もちろん(プロに)入って一番取りたい賞っていうのはそれだったので、やっぱり一番取りたいっていう気持ちはありますけど、チームの中でレギュラーを取らないと、そういう賞ってついてこないと思うので、まずはチーム内でレギュラーを取るっていうことを今は一番に置いています」
実況
「打たせました。二遊間。矢野が追いつく。一塁をアウトにしました。ショート・矢野のファインプレー」
アグレッシブなプレーと球界トップクラスの強肩を武器に今シーズン、飛躍を遂げたい矢野―。
これまで課題だった打撃でも規定打席に到達し、チーム5位の打率.260でシーズンを終え、そのイメージを払しょくした。
そんな矢野は今から4年前、明確に自分自身の目標を掲げていた。
矢野雅哉 選手(入団会見 2020年12月)
「誰もアウトにできない位置から強い送球でアウトにできる肩っていうのが、自分の魅力だと思っています。ゴールデン・グラブ賞は必ず取ります」
三井ゴールデン・グラブ賞、それはシーズンで最も守備に卓越した選手を称える名誉ある賞。守備の要であるショートのゴールデン・グラブ賞受賞者は、カープでは過去3人のみ。
ゴールデン・グラブ賞(ショート)
1995年 野村謙二郎 2010年 梵英心 2018年 田中広輔
その栄えあるカープ4人目の選手として2024年ゴールデン・グラブ賞の受賞が決定した。
守備に打撃に今シーズン、誰もが認める活躍を収めた矢野。キャリアハイの136試合出場を果たした2024年シーズンに何を感じたのか。10月5日、シーズン最終戦終了直後、その胸中に迫った。
矢野雅哉 選手(10月5日)
― シーズン、お疲れさまでした。
「お疲れさまです」
― どうですか、今シーズン? 駆け抜けたと思うんですけど。
「自分、昨年よりかは成長できているなって結果で現れたので、そこはよかったかなと思います」
― 体とかは?
「いや、体とかは全然、だいじょうぶやし、それはもう今まで野球をやってきて、いろいろな方法で体を仕上げてきたので、そこに関しては別に、特に…」
こだわりを持っていたショートのポジション。ライバルも多い中、実力で勝ち取った定位置だが、その結果に矢野は満足していない。
矢野雅哉 選手
「レギュラーって、開幕から最後まで出るっていうのがレギュラーだと思うので、それができへんかったから、レギュラーってまだ自分では認めたくないっていうか…。認めたくないっていうか、まだレギュラーではないって思っているから。だから来年は絶対に開幕スタメンで出て、143試合フルで出たら、そこでやっとレギュラーになったなって思えるかなと思う」
その意気込みをシーズン終了直後、すぐ行動に移した。
当初、チームとしてはシーズンの慰労も含め、矢野雅哉は湯布院リハビリキャンプへの参加を打診されていた。しかし、藤井彰人 ヘッドコーチに直談判し、秋季キャンプに参加。練習に練習を重ね、伝統の “カープイズム” を全身で表現する矢野は、自分が胸を張れる “本物のレギュラー” を目指し、きょうも鍛錬を重ねる。
矢野といえば…
実況
「痛烈な当たりだ。ショートの矢野、捕るぞ。ノーステップ送球。アウト! よく捕る。そして投げる。先頭バッター・(中日の)カリステ、ショートゴロ、1アウトです」
矢野がなぜ、こんなにもスーパープレーを連発できるのか。その極意を本人に聞いた。肩の強さなのか、手首のやわらかさなのか、どんな体勢でも踏ん張れる脚力なのか…。しかし、その答えはどれでもなかった。
矢野雅哉 選手
「うーん、でも、めっちゃ考えるので。(自分が)うまい、へたとかじゃなくて、相手のバッターとか、すごく、試合になる前に映像とかめっちゃ見るので、自分自身も考えているから、いいプレーができるんじゃないかなと思います」
グラウンド内で誰よりも練習し、グラウンドの外でも必死に野球に向き合う25歳。あの日、口にした大きな目標―。
矢野雅哉 選手(入団会見 2020年12月)
「ゴールデン・グラブ賞は必ず取ります」
「必ず取ります」―。ドラフト6位の名もなき青年の言葉をこのとき、何人が信じていただろうか。
矢野雅哉 選手(入団会見 2020年12月)
「『取りたいです』とか『何々したいです』とか、あんまり言葉にしたくなくって、『絶対、自分もこうやってやる』っていう気持ちがなにか自分の中で火をつけてくれる。それに向かって何をしないといけないのか、今、自分に何が足りないとか、はっきり明確に見えてくると思うので、それが『何々する』とか『何々取る』とかという言葉になるんじゃないかなと思います」
◇ ◇ ◇
青山高治 キャスター
確かに矢野選手のプレーって絶対、アウトにするという気持ちが見えてきますもんね。
RCC野球解説者 天谷宗一郎 さん
本当に気迫がありますし、ただ、その中でも本人が言っているように、しっかりとした準備っていうところがあるんだなっていうのをすごく感じましたね。
青山高治 キャスター
矢野選手が入団会見で宣言していたプロでの目標は「ゴールデン・グラブ賞は必ず取ります」。
田村友里 キャスター
もう有言実行ですし、“必ず” っていうのがすごいなって思います。
天谷宗一郎 さん
そうですね。あとはマツダスタジアムでゴールデン・グラブ賞を取るっていうところ。12球団の選手が一番難しい球場だって言っているところを本拠地にしながらゴールデングラブ賞を取ったっていうのは、自信にしてほしいです。
田村友里 キャスター
でも、「まだレギュラーだと認めてません」っていうのが…
天谷宗一郎 さん
湯布院って選手みんな行きたいんですよ。「行ける!」ってなるんですけど、断っているわけですから。来シーズンにかける覚悟を感じます。
青山高治 キャスター
矢野選手には今後も密着取材を続け、年末年始に特別番組を予定しています。
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