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弁護士が「成年後見制度」を悪用して1450万円着服か 報酬が安い?一度決めたら解任困難?弁護士会長を直撃

成年後見人を務める弁護士が多額の現金を着服。そんなショッキングな事件が広島でありました。起訴された成田学被告は成年後見人として男女2人から預かった1450万円を着服したとされています。成年後見制度の信頼を揺るがしかねない事件。この問題について考えます。

中根夕希アナウンサー
「成年後見制度を悪用した今回の事件。詳しく見ていきます。元弁護士で、福山市の無職・成田学被告(56)です。先月、業務上横領や有印私文書偽造・行使の罪で広島地検に在宅起訴されました」

中根夕希アナウンサー
「成田被告は2020年3月から21年10月にかけて、成年後見人として女性から預かった現金1200万円を着服したとされています。さらにこの発覚を免れるためにうその取引履歴を記載した通帳の写しを偽造したとみられています。また、2022年5月には、成年後見人として男性から預かった250万円を着服したとされています。合わせて1450万円となりますが、いずれも成田被告自身や被後見人名義の口座から現金を払い戻しして、着服したとみられています」

中根夕希アナウンサー
「また、このほかにも成田被告は2020年6月と7月に相続財産の管理を任された男性から合わせて900万円を着服したとされています」

青山高治アナウンサー
「ゲストをお招きしています。広島弁護士会の坂下宗生会長です。日弁連の成年後見人不祥事対応プロジェクトチーム事務局長を担当されたこともあります。坂下会長、よろしくお願いします」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「よろしくお願いします」

青山高治アナウンサー
「成年後見制度を悪用した事件としては被害額1450万円、それ以外も含めると2350万円。まず、今回の事件についての受け止めをお聞かせください」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「極めて残念な事件、あってはならない事件です。成年後見制度に対する信用を損ないかねない事件であり、また、弁護士の職にあった者が引き起こした事件として、極めて重大に受け止めています」

中根夕希アナウンサー
「成田被告は2000年10月から今年4月まで広島弁護士会に所属していました。福山市内で事務所を構え、広島弁護士会の福山地区会長や法テラス広島の副所長を歴任。成年後見制度のセミナーで講演もしていました」

青山高治アナウンサー
「責任ある立場も務めていたようですが、成田被告はどんな弁護士だったんですか?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「私自身は個人的に面識を有していたわけではありませんが、殊更に悪い評判等を耳にする弁護士でもなかったようです。いずれにしても、弁護士会長として大変残念に思っています」

中根夕希アナウンサー
「成年後見制度には『法定後見』と『任意後見』の2種類がありますが、今回は事件の背景となり、利用者が圧倒的に多い『法定後見』の制度に絞ってみていきます。成年後見制度は知的障害や精神障害、認知症などがあり、財産管理や契約など重要な手続きを1人で決めるのが心配な人をサポートする制度です。弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門職のほか、専門的な研修を受けた人、親族などが成年後見人になることができます」

中根夕希アナウンサー
「ここからQ&A形式で詳しくみていきます。坂下会長に質問していきますので、「〇」か「×」の札を挙げてください」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「分かりました」

中根夕希アナウンサー
「1つ目の質問です。誰を『成年後見人』にするかは、サポートを受ける本人が自由に選ぶことが出来る?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「『×』です。成年後見制度を利用する場合は、診断書など必要な書類と手数料を準備して住所地を管轄する家庭裁判所に申立てをします。申立てを受けた家庭裁判所は、事案の内容を検討して、その事案において適切だと思われる人を成年後見人に選任します。家庭裁判所において、専門職の選任が適当であると判断されれば、専門職が成年後見人に選任されます。家庭裁判所が成年後見人を選任する際に、サポートを受ける本人の希望は参考にされますが、本人が自由に成年後見人を選ぶことができる訳ではありません」

コメンテーター 吉宗五十鈴さん
「全国で大体、何人ぐらい利用しているんですか?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「全国では、24万人以上の方が利用されています」

中根夕希アナウンサー
「次の質問です。成年後見人の報酬は、通常の弁護士の報酬と同じぐらい支払われる?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「『×』です。報酬は家庭裁判所が決めます。管理する財産の額や業務の難しさにもよりますが、月額1万円~3万円が一般的です。一方、通常の弁護士の報酬は様々ですが、例えば、一般的な法律相談の場合は「1時間あたり1万1000円」というケースが多いです。これに比べると、成年後見人の報酬は安いかもしれません」

青山高治アナウンサー
「だからといって、今回の事件は許されるものではありませんね」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「全くおっしゃる通りです。成年後見人は本人の財産をきちんと管理し、その身上を適切に保護する責任を負いますが、その責任の重さは、報酬の多い少ないとは関係ありません」

中根夕希アナウンサー
「3つ目の質問です。成年後見人との間でトラブルがあった場合は成年後見人をいつでも簡単に解任できる?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「これも『×』です。まず、前提として、成年後見人の解任は、本人や親族ではなく、家庭裁判所しかできません。また、成年後見人を解任するためには、成年後見人に不正な行為や著しく不適切な行為が認められることが必要です。そして、このような事実を証明する証拠も必要となります。明確な証拠を元に、解任する理由があることを家庭裁判所に認めてもらわなければなりません。ただ、証拠を集めるのは簡単なことではなく、ケースによっては法的な対処が必要な場合もあります」

青山高治アナウンサー
「いったん成年後見人が選ばれたら、解任するのは難しいんですね」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「そうですね。もっとも、解任するに至らないケースでも、本人や親族において、成年後見人の業務のあり方に納得が行かないなどの不満をお持ちの場合は、監督機関である家庭裁判所に相談をして、解決を図ることもできます」

中根夕希アナウンサー
「今回の事件は、制度の信頼性を揺るがしかねないものですが、信頼回復や再発防止にどのように取り組まれますか?」

広島弁護士会 坂下宗生会長
「広島弁護士会では、従前より家庭裁判所から弁護士会に対して成年後見人に就任する候補者の推薦を求められた場合、弁護士会内で作成した推薦名簿に登録された弁護士を推薦しています。弁護士がこの名簿に登録するためには、一定の年数のキャリアを積むことや保険への加入等が求められるほか、定期的に所定の研修を受ける必要があります。今回の事件を受けて、成年後見人を務める弁護士が、より厳しい倫理観を持ち、本人を適切に支援するために研修内容の更なる充実、不正防止のためのチェック体制の構築などに努めて参りたいと思います」

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