上質なオリジナルミュージカルを創作し、年間通して上演する日本で唯一の地域拠点型劇場が愛媛にあります。それが「坊っちゃん劇場」。実はこちら「奇跡の劇場」と呼ばれています。
「坊っちゃん劇場」では自主制作のオリジナル作品を2006年より毎年欠かさず上演。場所は道後温泉から車で約30分の東温市にあります。
川が流れ田畑の広がるのどかな風景の中に建つ劇場は、お世辞にもアクセス便利とはいえない立地。しかし、ここに多くの人が観劇を目的に訪れているのです。
上演される作品は瀬戸内・四国エリアの歴史や伝統文化、偉人を題材にしたミュージカル。
脚本家には名誉館長のジェームス三木さんをはじめ、スーパー歌舞伎Ⅱ「ワンピース」(2024年にはスーパー歌舞伎Ⅱ「鬼滅の刃」も!)の横内謙介さん、映画「フラガール」の羽原大介さん、ディズニーアニメ「アナと雪の女王」の主題歌「Let It
Go」の訳詞を手掛けた高橋知伽江さんなど、そうそうたる顔ぶれ。音楽やダンス、美術も舞台芸術界の一線で活躍するスタッフがそろっています。
いやもう、そんな舞台が愛媛で観られるなんて。それも年間通して! 東京など首都圏でも一年間のロングラン公演というのはなかなかないので驚きです。
2006年に第一作目の作品として生まれたのが、愛媛県松山市を舞台にした夏目漱石の小説「坊っちゃん」誕生100周年に上演された「坊っちゃん!」。
「吾輩は狸である」は四国各地に数多く残るタヌキ伝説とシェークスピアのロミオとジュリエットが融合したコメディ作品。
四国が生んだ幕末のヒーロー坂本龍馬を主人公にした人気作「龍馬!」。
愛媛県出身の俳人・歌人である正岡子規の人生を、底抜けに明るい喜劇に仕立てた「正岡子規」。
愛媛で医学を学んだ日本人初の女性産科医・楠本イネの、女性・混血児という偏見や差別を乗り越えて邁進する成長物語「幕末ガール~ドクトル☆おイネ物語~」。
エレキテルや「土用の丑の日」のうなぎの商品コピーで知られる、香川県出身の平賀源内と仲間たちが、庶民が夢見ることを許されなかった時代に未来に向かって夢を追う姿を描いた「げんない―平賀源内―」。
長・伊佐庭如矢(いさにわゆきや)の物語「道後湯の里」。
2009年にしまなみ海道10周年記念作品として初演、2014年に瀬戸内海国立公園指定80周年・しまなみ海道15周年を記念して再演された「鶴姫伝説」。瀬戸内海の島々を舞台にした合戦絵巻は、瀬戸内のジャンヌダルク・鶴姫の純粋な愛と平和への祈りに満ちた作品。
2011年初演の「誓いのコイン」は、松山城の井戸跡から発見されたコインにロシア人と日本人女性の名前が刻まれていたというエピソードをもとにした国境を越えた愛の物語。2012年にはロシアでも上演。2019年にロシア、愛媛で特別公演が行われました。
明治時代の新居浜別子銅山を舞台に、煙害問題の解決や環境問題に尽力した実業家・伊庭貞剛(いばていごう)の家族をモデルにした作品「瀬戸内行進曲」。
岡山に伝わる温羅伝説から、正義とは何かを問う「~おかやま桃太郎伝説~鬼の鎮魂歌(レクイエム)」。
そして第16作の「ジョンマイラブ―ジョン万次郎と鉄の7年―」は、漂流したのちアメリカに渡り教育を受け、その後帰国して激動の幕末に新しい文化を切り拓いていったジョン万次郎とその妻・鉄の物語。
ヒロインの鉄役は、AKB48チーム8のメンバーが交代で出演します。
2022年11月~12月にかけては、徳島、岡山、香川、広島、高知をまわる初の中四国ツアー、2023年1月に東京公演も行われました。
作品ラインアップもすごいのですが、劇場も素晴らしいのでご紹介。客席のレイアウトは観客主体の設計でどこに座っても見やすいのが特長。ミュージカル専用の劇場として、音の反響にも配慮されています。
背もたれ高めのシートはふかふか、とても座り心地がよくて快適。小さな子ども連れでも観劇できる「親子室」もありますよ。
こちらは「坊っちゃん劇場」を運営する株式会社ジョイ・アートの社長、越智陽一さん。舞台芸術を通して地域の歴史や文化を発信し、次世代を担う子どもたちへ繋いでいくことを使命として劇場事業に取り組まれています。
「ここでしかできない作品づくりのため、脚本家の方には題材となる歴史や偉人にまつわる場所に実際に足を運んで取材をしてもらっているんですよ」と越智さん。ゆえに、その土地ならではの知られざるエピソードも盛り込まれた内容になり、それまで気づかなかった郷土の魅力の再発見にも繋がっているとか。「地域の宝」と称賛されるのも頷けます。
劇場では2022年11月から、定点撮影でカット割りなく撮影され舞台を等身大で楽しめる8Kの映像上映も開始しました。日本に3台しかないプロジェクターで、劇場の過去作品を定期的に上映。話題の舞台作上映も予定されるなど、新しい取り組みも気になりますね。
遠くまで行かなくても、日常的に上質な舞台芸術に出会える場所が瀬戸内にある奇跡! 楽しさと学び、地元の魅力再発見が待つ劇場で、本物の舞台をぜひ体験してみてください。
坊っちゃん劇場
住所/愛媛県東温市見奈良1125
電話/089-955-1174
営業時間/劇場事務所9:00~18:00
※上演日は公式サイトの公演スケジュールを確認
定休日/火曜日
駐車場/有
最寄駅/伊予鉄横河原線「見奈良」駅から徒歩約10分
https://botchan.co.jp
ちなみに、敷地内には二億年前の地層から湧き出す天然温泉「利楽」、リニューアルしたばかりの温泉露天風呂付きの部屋もある宿泊施設「樹楽」もあり。愛媛の食材を使った地産地消の和&洋レストランもあるので、観劇とあわせて利用するのもおすすめです。
見奈良天然温泉 利楽
住所/愛媛県東温市見奈良1110
電話/089-955-1126
営業時間/大浴場6:00~24:00(受付は~23:00)
休館日/公式サイトで確認
日帰り入浴料金/中学生以上980円~、4~12歳(小学生まで)400円~、65歳以上780円~
駐車場/有
https://www.spa-riraku.com
くつろぎの宿 樹楽
住所/愛媛県東温市見奈良1110
電話/089-955-1661
営業時間/チェックイン15:00 チェックアウト10:00
駐車場/有
https://inn-juraku.com
▼記事提供元
「瀬戸内Finder(ファインダー)」は、瀬戸内を共有する7県(兵庫県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、香川県、愛媛県)の魅力を世界に発信しています。
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