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みみコミ💬明治・日本画の前衛を駆ける「菱田春草と画壇の挑戦者たち」(~6/13(火)奥田元宋・小由女美術館)

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radiko:(再)田口麻衣noみみコミ | RCCラジオ | 2023/04/30/日 24:00-24:15
出演者:奥田元宋・小由女美術館 学芸員 吉川昌宏(きっかわ まさひろ)さん


Q.今回は明治時代に描かれた日本画の数々が展示されているということですが、まずはタイトルにもお名前がある「菱田春草(ひしだ・しゅんそう)」さん。はじめは「存じ上げないな…」と思いましたが、お写真を拝見して「見たことある!」、作品を見て「知ってる!!」となりましたが、菱田春草さんについて教えてください。

菱田春草は明治時代後期に活躍した日本画家です。病気により早くに亡くなりましたが、その短い画業の中でも多くの傑作を生み出した画家として多くの人に愛されています。明治7年に長野県飯田市に生まれ、東京美術学校に進学、日本美術院の創立にも携わりました。

Q.その菱田春草さんと「画壇の挑戦者たち」ということで、同じ時代を生きた画家の方々の作品も展示されているということなんですね。他にはどんな方がいらっしゃるんですか?

東京美術学校では狩野派に属する日本画家・橋本雅邦に学び、同校校長の岡倉天心からも薫陶を受けました。同校の先輩である横山大観や下村観山、同郷でもある西郷孤月も、刺激を与えあった仲として展示を通してご紹介しています。

Q.菱田春草は(当時校長だった)岡倉天心から才能を認められた方なんですね。

明治時代、まさに新時代入っての第一世代と言いますか、「新しい日本で新しい芸術を作っていく」という最初の世代にあたるような方たちですね。

Q.賛否が分かれる中で、認めて引き上げてくれる人がいるのはすごいなと思いますし、先輩の横山大観とも関わりが多かったみたいですね。

インド、アメリカやヨーロッパまで、一緒に長期の外遊に出かけていますし、日本美術院でもずっと隣で一緒に描いているような仲ですので、お互い刺激を与え合ってたというのも、想像に難くないなと思います。

Q.明治というと、文明開化で西洋化が著しく進んでいった時代ですよね。絵画の世界でも、そうだったんですか?

新たに西洋画法が入ってくる中で、「日本画」という言葉・概念が生まれてくるのも明治時代になります。「日本画」の定義には様々ありますが、一般的には顔料をニカワで溶いて描くという、画材の面から特徴付けられます。しかし「西洋の絵画」に対して「日本の絵画」とはいったい何なのかという問いかけは春草も含め多くの芸術家が模索してきたテーマでもあります。本展では春草や交流の深かった作家たちの模索、挑戦に触れていただける展示内容かなと思います。

Q.菱田春草をはじめ明治の画家の方たちは、どのような挑戦をされたのでしょうか?

本展では、春草たちの挑戦を「線」「空気・光」「色彩・古典」の視点から捉えてご紹介します。代表的な例では、伝統的な線描による表現に対し、西洋絵画の空気遠近法などを取り入れた独自の「朦朧体」への挑戦や、海外視察からの帰国後によく見られる琳派や古典の色彩表現を取り入れた画風などは、当時の前衛的な挑戦といえると思います。

Q.「朦朧とする」が語源の「朦朧体」。すごいネーミングですね。

「モヤモヤっとしている」という意味にも取れますが、当初はもうちょっと悪い意味、悪口に近いようなニュアンスもあったようです。発表当時は賛否を巻き起こして、否定的な評価も多かったです。
ぼやかした感じで、遠くにあるものは空気の層によって薄れていく感じなど、一つの絵の中で空間の表現が巧みになされていますので、ぜひ作品を見ていただきたいです。

Q.そんな中で、吉川さんが今回の展示会でイチオシなのはどの作品ですか?

展覧会のチラシでもご紹介してるんですけど、菱田春草の《桐に小禽》という掛け軸の作品です。1908年頃のヨーロッパ外遊帰国後の作品ですが、大胆な構図で木がスーッとまっすぐ入っていて、葉っぱも遠目にはすごく写実的な表現に見えますが、よく見ると「たらしこみ」という”にじみ”の古典表現に近い技を使っています。また、一つ一つの葉っぱに輪郭線を書いておらず、塗り残しで葉っぱの重なりを表現するような匠の技術が使われています。この時期の春草の作風をよく表す代表的な作品ではないかなと思います。

Q.真似するわけじゃないですけど、私もこの絵好きです。全体的にほわっと幻想的な中に、毛並みまで伝わるような動物たちや、優しくて綺麗な色合いとか印象的ですね。

優美、繊細な表現が印象的な作風のものが多いなと思います。かわいらしいリスの絵や、2羽のポチャッとしたかわいい鳩がとまっている作品などもぜひ見ていただきたいなと思います。

Q.最後にリスナーのみなさんにメッセージをお願いします。

今回は春草の故郷・長野県にある水野美術館様の特別協力により、その貴重なコレクションのなかから選りすぐった作品をご紹介する展覧会です。菱田春草たちの挑戦の数々をぜひこの機会にご覧いただければ幸いです。


企画展「菱田春草と画壇の挑戦者たち」

会場:奥田元宋・小由女美術館
会期:6月13日(火)まで開催中             
入館料:一般1000円、高校生・大学生500円、中学生以下無料
お問い合わせ:奥田元宋・小由女美術館0824-65-0010

IRAW掲載にあたり、放送から編集を加えています。

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